【レコ大新人賞 現役高校生歌手・新里宏太の武器とは?】
新里宏太くんは、完璧なまでに自身のメンタルをコントロールするそのルーツは、中学時代に体験した「いじめ」にあった。
「小学校までは明るかったのに、中学でなぜかいじめられて“陰キャラ”になった。自分を変えなきゃと思った」
ふらっと訪れた書店で1冊の本と出合った。英マジシャン、ダレン・ブラウンの「メンタリズムの罠(わな)」。「メンタリズム=心理学や錯覚などを利用した人心掌握術」を解説した同書には「他人を変えるのは時間がかかる。自分を変えろ。自分を見つめ直せ」と書かれていた。
「500ページ近くある本を1日で読み、それをもとに実践してみたんです。いじめっ子に気持ち悪いくらいにフレンドリーに明るく話しかけてみると、向こうは心理的に引いて、あきれて近寄らなくなりました。結局、自分が何もしないからいじめられていたんです」。
いじめを克服したことで、自分の殻を破り、自信が持てるようになった。
音楽好きだった両親の影響で漠然と夢見ていた歌手への道は、11年のジュノン・スーパーボーイ・コンテストで開けた。メンタリズムに裏付けされた堂々としたステージと、抜群の歌唱力に、10以上の芸能事務所が争奪戦を繰り広げた。
「本当は学校の先輩が、学生証の写真を使って勝手に応募していたんですけど、夢がかなって本当にうれしかった」
昨年7月に発売したデビュー曲は、人気アニメ「ワンピース」の主題歌に抜てきされヒット。かつてのいじめられっ子は今や、音楽界の海賊王をめざし力強く船出している。
新里にはメンタリズムともう一つ、冷静になれる武器がある。オーディションを受ける際に、祖母が教えてくれた言葉だ。
「『あおいくま』。あせるな、おこるな、いばるな、くじけるな、まけるな、の頭文字です。ステージの袖で唱えると不思議に落ち着く。レコ大のときもやりました」
今春、高校を卒業。都内の大学に進学し本格的に心理学を勉強する予定だ。
「大学生になったら、知識を生かしてクイズやバラエティーの番組にも出演したい。音楽ではアルバムを発売したりコンサートをしたり…やりたいことがありすぎるくらい」と夢は広がるばかり。